見上げれば思う。 神様はきっと、これを知らない。 だって神様は雲の上に居るから。 雲の上に居る神様は、雲の下に降ってくる、この綺麗なものを見たことはないだろう。 そう思うと、少し得をしたように思う。 神様さえ知らない素晴らしいものを、知っているということ。 僅かに雲から覗く月の下で。 オレンジ色の街路灯の下で。 耳に痛い冷たさが、この祝福を、もっともっと柔らかく見せる。 それが嬉しい。 寒さなど、気にもならないほどに。 ふと思いついて手を伸ばすと、すっかり冷えてしまった指先でも、簡単に薄れていった。 足元を見下ろせば、すっかり白くなっている。こっちは消えていない。 後から後からやってくるこの幻想達は、どうやら選り好みをするらしい。 ――こっちだって、ある意味で似たようなものなんだけどな。 つまり、同じだからといって、親しみを持ってくれるようなものではない、ということか。 なるほどと納得して、思い出し笑い。 いつだったか、人を妖精呼ばわりした小さな子供はやたらと寡黙で、挨拶などほんの一度しかしてくれなかったっけ。 実在する不思議な存在というものは、御伽噺に出てくるそれよりも気難しい。 ――あんなに優しそうなのにな。 指先に残るほんの僅かな水滴から、もう一度空を見上げた。 雨とも違い、ただ静かに舞い散るもの。 ふわふわと漂う、海の中で。 光を纏う冬の踊り子が、聴こえない歌を奏でている。 2005.12/14(加筆修正:2006.03/03) |