- 残響 -

跳ね返る
壁の向こうへ
跳ね返る
壁の向こうから
緩く反り返る円盤を穿って
輪に連なって重なって
跳ね返る跳ね返る跳ね返る跳ね返る
二重の残響は四十に膨れ
割れない数はただ一つ
時間が終わるその時まで
裂かれた掻き傷を惨めに残して
続きすらせずに広がって

けれど


私は

私だけは、決して



決して、返してはダメ



- 軋轢 -

リフレインリフレインリフレイン。
これはなんだここはどこだわたしはだれだ。
リフレインリフレインリフレイン。
外は雨だ内は嵐だどこも行き止まりだ。
リフレインリフレインリフレイン。
始め続き終わり数珠繋ぎ雨雨雨。
リフレインリフレインリフレイン。
出してここから出たい出してしまいたい。
リフレインリフレインリフレイン。
箱の水が渦を巻き喰らい合う雨雨雨。
リフレインリフレインリフレイン。
終わらない続かない始まらないエンドレス。
リフレインリフレインリフレイン。



- おはよう -

おはようの前
昨日の終わり
八つ当たり わがまま 意地っ張り
ぶつけた自分
ぶつける自分
裏返しの挨拶に差し出される笑顔で
胸が振り子を失い軋む
こんなにも優しいヒトビトを
「もう忘れた」と無言で騙し
「今日も宜しく」とのうのうと
後悔と懺悔を千切り隠して
ひたすらに手を振り続ける自分
なのに時間は今日も訪れ
私は「おはよう」を繰り返す
そして朝は明日も訪れ
また卑怯者を繰り返す



- 薄皮の下 -

頷くことは防衛術
良い成績は処世術
笑顔の仮面は社交性
沈黙するのは協調性

あなたはこれで満足かい?
イイコの態度にご満悦?

泣いてあげよう
笑ってあげよう
お望みとあらば月にも行こう

あなたが愚かであることを

誰より知る者はここに居るよ



- くらげ -

心の中でぼんやりと記憶が固まった

私はどこで間違えた?

レールを見つけられない路面電車が
猛スピードの車に気圧されて立ち往生

笑った仮面なんかじゃなく
仮面そのものが笑う感覚

泥で捏ね上げたもう一人が
のんべんだらりと虚勢を張っている

電池の無い時計が私の部屋を刻んでいく

利き腕と痛覚が隷属してくれない

そうして私は身動きがとれずに
頭をそこへ打ち付ける