キミが死んだときはボクはどうするんだろうって君に聞いてみた。 だって、悲しいときや空しいとき、キミはいつもどうしたらいいか答えをくれたから。 キミは重力の終着点なんだと思う。だからたくさんの答が詰まっている。キミの中に存在しない答なんかないと、ボクはちゃんと知っている。 「ねえ、キミが死んだらボクはどうなるの? 悲しくて死んじゃうの? 空しくて死んじゃうの? 何も感じられなくて死んじゃうの?」 「……どうして死ぬって決まってるのさ」 「だって、キミがいなくなったらボクは重力を忘れるんだよ」 そうしたら生きてなんていけないでしょう。 自信を持って言えば、キミは読んでいた本に視線を隠してしまった。でも、文字を追って無いことくらいキミを見れば分かる。 頭の中から答を探してくれているんだろう。 ボクはわくわくしながら、キミが答を取り出すのを待った。 「じゃあ、どうしてボクにそれを聞くのか教えてくれる?」 しばらくして、キミは本と見詰め合ったままボクに聞いた。それはきっと、答を探すためのキーワードだ。推理小説を読むには、まず疑問を持ち続けることが一番大事だと言ったキミを思い出した。 「キミがなんでも知ってるから」 やっぱり胸を張って答えた。 迷子になったらどうすればいいか、落し物をしたらどこに行けばいいか、嫌なことがあったら誰の傍で泣けばいいか、ボクに教えてくれたのは全部キミ。 そう話すと、キミは呆れたように目を閉じて、疲れたように本も閉じて、諦めたように溜め息をついた。 ボクが三秒数えるのを待って、キミはこんなことを言った。 「じゃあ、キミが死んだらボクはどうしたらいいか、まずキミから教えてよ」 どんな答もくれているのは、本当はいつだってキミの方。 2008.04/08 |